2022年にスタートしたFIP制度とは?再エネへの影響は?

2025年のカーボンニュートラルの実現目標に向け、国全体で再生可能エネルギーの主力電源化を目指す動きが加速しています。その政策の一環として、2022年4月よりFIP(フィードインプレミアム)制度が開始されました。従来の制度はFIT制度と呼ばれるものでしが、この制度と新しいFIP制度はどのように違うのでしょうか?また、新たな制度が導入されたことによって再生可能エネルギー業界にどのような影響があるのでしょうか?
今回の記事では、FIP制度の特徴とFIT制度との違い、また、FIP制度の導入が再生可能エネルギー業界に与える影響やこれによる当業界での採用動向の変化について解説します。
[目次]
FIP制度とは?制度の概要
FIP制度は、再生可能エネルギー発電事業者が発電した電気を卸電力取引市場や相対取引市場で売電した際に、基準価格(FIP価格)と市場価格の差額をインセンティブ(プレミアム額)として事業者に交付することを定めた制度です。2022年4月に開始され、今後は従来のFIT制度(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)とこのFIP制度の二つの制度が共存することになり、現在FIT制度を適用している発電事業者も、出力値が50kW以上であればFIP制度に移行することが可能です。
FIP制度が導入された背景としては、「再生可能エネルギー電源の自立化」を目指す政策的な意図があり、前述の通り2050年カーボンニュートラルの実現に向けた再生可能エネルギーの導入を加速させるための政策の一環とされています。
FIP制度の導入により、再生可能エネルギー発電事業者にとって以下のようなメリットが期待できます。
- 発電業者自身の裁量で計画的な発電が可能である
- プレミアム額と計画的な売電により収益拡大の可能性が高まる
- 売電先を複数から選択できるため多様なビジネスモデルが期待される
FIP制度とFIT制度の違い
2012年から開始された従来のFIT制度では、再生可能エネルギー発電所から作られた電気は全て卸売電気事業者が買い取ることが保証されています。買取価格は毎年国によって定められ、既定の年数において同じ価格で売電することになります。
FIP制度では、前述の通り市場価格が電力需要や供給量に応じて変動し、その価格にプラスでプレミアム額を上乗せした金額を常に受け取ることができます。この他にも、インバランスコスト(発電予想と実績のギャップに応じて発生するコスト)の有無や申請可能な出力値に関して、FIT制度とFIP制度で多少の違いが存在します。主な違いは以下の通りです。
【FIT制度】
- 固定価格
- プレミアム額無し
- インバランスコスト無し
- 申請可能な出力
- 申請可能な出力値は1MW未満
【FIP制度】
- 変動価格
- プレミアム額有り
- インバランス有り
- 申請可能な出力値は1MW以上可
FIP制度により予想される再生可能エネルギー業界への影響
FIP制度の導入により、再生可能エネルギー業界では様々な変化が予想されています。以下、当業界で予想される主な影響と、それに伴う採用動向の変化について解説します。
1.蓄電池の積極的な活用
発電事業者側の今後の戦略として、価格が下落している時は消極的に売電を行い、価格が上昇している時は積極的に売電を行うといった計画的な売電を行うことが求められます。このため、蓄電池などの設備投資を利用する事業者が増えています。例えば、太陽光発電であれば好天時に、風力発電であれば風が強い時に積極的に発電を行い、すぐに売電をするのではなく、価格が下落している時は蓄電池に貯めておき、需要・価格が上昇した時に積極的に売電するということになります。
このため、現在注目が集まっている蓄電池分野の更なる成長と、それに伴う蓄電池関連の開発職や営業職の採用ニーズが顕在化することが予想されます。
2.発電予測技術の向上
FIP制度では、発電業者は供給ことが定められており、実際の供給量との間に差がある場合、ペナルティ料金を総発電事業者に支払わなければなりません。このリスクを減らすため、より高精度な発電予測の重要性が増しており、発電業者は発電予測のツールやサービスの活用が必須となっています。例えば、気象データ提供・分析サービスWxTech(ウェザーテック)は、2022年電気事業者向けに新たな風力発電量予測サービスを開発し、国内外にサービスを提供し始めています。このような企業が増えるにつれ、発電予測技術の開発や営業に関わる人材の需要がますます高まることが考えられます。
3.再生可能エネルギーの更なる導入と新たなビジネスの創出
大手電力会社が電力の大幅な値上げを検討している中、FIP制度が導入されたことにより、再生可能エネルギーを売買することによる経済的なメリットを見出す消費者が増えています。このように再生可能エネルギーを求める企業が増える中、新たなビジネスも誕生しています。
例えば、再生可能エネルギーの発電所は電子力発電所や火力発電などの従来の発電所と比較して規模が小さい傾向があり、個々の発電事業者が市場に電気を供給することや需要家を探すことが困難となりますが、近年ではこの一連のプロセスを代わりに行うアグリゲーションビジネス、アグリゲーターが急増しています。アグリゲーターは、電気の供給だけでなく、需要側の調整を行い、需給バランスを安定化させる役割も担っています。
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このように、再生可能エネルギー業界ではFIP制度の導入により、今後蓄電池の活用や発電予想技術、そしてアグリケーションビジネスをはじめとする新たなビジネスの誕生が予想されます。これに伴い、これらの分野における新たな職種の創出や、開発職や営業職などの従来の職種への需要の増加が期待されます。
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