脱炭素社会とは?注目の高まる業界や需要の高まるスキルをご紹介

地球温暖化による環境への影響が明らかになるにつれて、脱炭素社会への取り組みが地球規模で加速しています。当記事では、脱炭素社会へ向けた取り組みとその課題、また脱炭素社会の実現に向けて今後注目や需要が高まる業界や職業をご紹介します。
脱炭素社会とは?
脱炭素社会とは、地球温暖化の原因となる温室効果ガス(二酸化炭素やメタンなど)の排出量が実質ゼロとなる社会のことです。温室効果ガスの実質ゼロはカーボンニュートラルとも呼ばれ、温室効果ガスの排出量と、植林などによる吸収量を同量にすることで実現が可能です。
地球温暖化対策の国際的な枠組みであるパリ協定では、地球の気温上昇を工業化前と比べて1.5℃以内に抑えることで合意がなされました。これを受けて、日本政府も2025年までにカーボンニュートラルを目指すことを宣言しています。
環境省と国立環境研究所が発行するレポートによると、2020年度における日本の温室効果ガスの総排出量はCO2換算で11億5,000万トン、森林等の吸収源対策による吸収量は4,450万トン、すなわち合計で11億トン以上のプラスとなっています。2000年以総排出量が最も高くなった2013年度の総排出量は14億900万トンであり、そこから比較すると大幅な削減が実現できていることは事実ですが、カーボンニュートラル実現への道のりは決して簡単なものではないことが見て取れます。
脱炭素社会に向けて注目の高まる業界と取り組み、そして課題
脱炭素社会の実現のためには、政府やもちろんのこと自治体や企業、そして個人的なレベルでも様々な取り組みが必要となります。個人の取り組みの代表例として、ゴミを減らす、家のリフォームや家電の買い替え、節電などを通じて消費電力を減らす、自家用車の利用を控えて公共交通機関を利用する、自宅の電源を自然電力由来のものに切り替える、などすぐにでも始められるアクションが数多くあります。
企業にとっても、オフィスでの節電やペーパーレスへの取り組みなど比較的簡単に始められるアクションもある一方で、2020年度の温室効果ガス排出量の内訳を見てみると、最大の消費者は産業部門で全体の34%、次いで運輸部門で17.7%であり、この2つの部門で全体の50%以上を占めています。すなわち、この分野でビジネスを展開する企業にとって、脱酸素社会への取り組みを行うことで、事業のあり方や枠組みを根本から見直す必要に迫られるケースも少なくありません。
業界ごとの代表的な取り組みと課題について、以下で紹介します。
エネルギー業界
2021年時点で、日本のエネルギー供給の72.9%を化石燃料による火力発電が占めています。エネルギー転換部門におけるCO2は電気・熱配分前の総CO2排出量の40%超を占めており、脱炭素社会を目指すうえで決して無視することのできない部門です。
これに伴い、エネルギー業界では再生可能エネルギーへの大きなシフトが見られます。BloombergNEFの算出によると、設備容量では2025年に再生可能エネルギーが全体の5割を占める水準、また2045年以降には8割を占める水準になると予測されており、再生可能エネルギー関連設備への投資の増加や市場規模の拡大が進んでいます。再生可能エネルギーの中でも日本政府は洋上風力を再生可能エネルギーの切り札と位置付けており、2023年には国内初の大規模な洋上風力発電所が秋田県沖で商業運転を開始するなどの動きも見られます。
一方で、主な課題としては以下が挙げられます。
- 発電所の設置には政府や自治体、民間や地域の人など多くの利害関係者の合意が必要となり、時間がかかる
- 発展途上の技術が多く、発電にコストがかかる
- 太陽や風力、地熱などの自然エネルギーは発電量が天候や時間に大きく左右されるため、安定した供給を行うには負荷調整のためのシステムやプロセスが不可欠
- 負荷調整の経験やスキルを持つ人材が非常に少ないため、人材の確保が困難
製造業
製造業では通常工場の稼働において大量のCO2が排出されるため、エネルギー効率の高い工場機械への転換や設置など、生産効率を落とさずにCO2を減らすための取り組みが求められます。生産効率を高めるため、RPA(ロボティクス・プロセス・オートメーション)が今後ますます注目を集めることが予測されます。また、製品にもマイクロプラスチックなど環境負荷の高い素材を使わないなど、製造過程と製品の双方への配慮が求められます。
一方で課題としては、新たな機械の調達にコストがかかることに加え、半導体不足やウクライナ情勢による資源不足など、工場設備や機械の調達において国際情勢に左右されることが多い点が挙げられます。
自動車業界
CO2総排出量の17.7%を占める運輸部門。この部門でのCO2排出量削減の鍵を握るのが自動車業界です。脱炭素化に向けた取り組みの大きな軸の一つとして、電気自動車および水素自動車の開発が進められています。日本は2030年までに、ICEと呼ばれる従来型のガソリンをエンジンとして動く自動車の割合(乗用車の新車販売における割合)を全体の30~50%まで減らし、2035までには100%電動化、すなわち新車として販売される乗用車のすべてをEV(電気自動車)やFCV(燃料電池自動車)、PHV(プラグイン・ハイブリッド自動車)、そしてHV(ハイブリッド自動車)にするという目標を立てています。
加えて、MaaS(Mobility as a Service)を軸とした移動効率を上げるための取り組みやスマートシティの構築など、自動車製造における技術とITの双方を活用することで、脱炭素社会への取り組みにとどまらず、今後の世界を大きく変えるようなイノベーションを起こす可能性を秘めています。
課題としては、電気自動車の車両価格の高さや航続距離の短さから普及のスピードが遅いこと、また充電インフラが不足していることが挙げられます。加えて、電気自動車には蓄電池の搭載が必須となりますが、蓄電池にはリチウムやニッケル、コバルトなどのレアメタルが原材料として含まれており、これらを採掘・製造する過程でエネルギーを大量に使用することとなるため、脱炭素社会の実現に向けて蓄電池のリユースおよびリサイクル体制を確立する必要があります。
脱炭素社会に向けて需要の高まるスキル
上述のように、再生可能エネルギー、製造業、そして自動車業界は脱炭素社会の実現に向けて大きな役割を担っています。また、ビジネスモデルの変革に伴い従来とは異なるスキルを持つ人材への需要が高まっていることも事実です。以下、各業界で需要の高まっているスキルをご紹介します。
再生可能エネルギー業界
再生可能エネルギーは比較的新しい分野であることに加え、今後確実な成長が期待されて人材への需要が高まっていることから、インフラ、建設、機械、電気、貿易などの業界外からの人材獲得も積極的に行っています。
求人数が増えている職種としては研究開発職などの専門職が挙げられます。また、発電プラントの建設案件の増加に伴い、電気や土木関連の資格を持つ人材への需要が非常に高い状態にあります。
再生可能エネルギーの普及のためには負荷調整が欠かせない一方で経験を持つ人材が少なく、今後さらに高い需要が見込まれる分野です。新規で再生可能エネルギー事業に参入を試みる企業では、経営企画や事業開発部門で活発な採用が見られます。
製造業
高まるオートメーションの需要に伴い、プログラミングや制御設計のスキル・経験を持つ人材が求められています。またIoT関連スキルの需要も引き続き高止まりしている様子が見られます。
自動車業界
電気自動車の普及に伴い、蓄電池やバッテリー関連のスキルおよび経験への需要が高まっています。また、電気自動車の充電インフラの不足に対処するため、これらの充電設備の設計や設営関連の求人が増えている様子が見られます。
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