世界で需要高まる環境エンジニアとは?仕事内容や必要なスキル・資格を徹底解説

脱炭素社会の実現や二酸化炭素の排出量削減に向けて、世界中で様々な課題が露わとなっていますが、これらの課題の解決のために環境エンジニア(環境保全エンジニア)の仕事が重要視されています。社会に大きなプラスの影響を与える環境エンジニアの仕事内容は、STEM(科学、テクノロジー、エンジニアリング、数学)分野におけるキャリアアップを志望する若い世代にとっても、魅力的なものとなっています。
今回は、まだ日本では知名度は比較的低いながらも世界的な需要が高まる、環境エンジニアという職種の主な仕事内容や、必要な知識、スキル、未経験から環境エンジニアを目指すことは可能かどうかについて詳しくご紹介します。
目次
環境エンジニアとは?
環境エンジニアとは、機械メーカーや研究機関、環境調査会社において、環境保護や公害防止に役立つ機器や技術を専門的に開発する職業です。これらの機器の具体的な例としては、汚染状況の測定装置や、浄水装置、リサイクル装置や工場廃棄物などの処理装置が挙げられます。環境エンジニアの仕事内容としては主な以下となります。
環境エンジニアの業務内容
- 顧客や関係部署との打ち合わせ・ヒアリングを行う
- 計図や仕様書から材料費などの合計金額を算出し、機器の工事にかかる総工費を算出する
- 概略設計をもとに機器の設置場所の地形や地質を考慮し、電力会社や行政などとの打ち合わせを経て、設計を行う
- 設計と性能の再検討を行い、最も発電効率の良い設計を判断したうえで、顧客へ提案する
- 顧客への最終設計合意を経たうえで、部材の手配、工事の準備を行い、実際の工事を開始する
- 発電機器の自主検査や国の法令検査を経て、顧客に引き渡しを行う
- 定期点検などを通して、常に最適な発電ができるよう保守を行う。
環境関連の問題の解決のためには様々な分野をまたいで取り組む必要があるため、仕事を行う上で幅広い知識が求められます。
環境エンジニアの就職先
環境エンジニアとしての雇用を希望する場合、主な就職先としては以下の4つが挙げられます。
環境機器メーカー
一番馴染みのあるものとしては、浄水装置の開発や、リサイクル方法の開発に関わる機器メーカーが挙げられるでしょう。また、大気汚染や水質汚染の度合いを調べる機器開発を行う企業も含まれます。
環境調査研究機関
適切な環境保全を行うための環境調査研究機関も、環境エンジニアの就職先の一つとして挙げられます。ある特定の地域の水質や空気が汚染されている場合は、なぜ他の地域よりも汚染度が高いのか、そして原因は何かを追求します。
分析機関
環境調査研究機関などで実際に測定されたデータや採取物を、さらに詳しく観察・分析する機関のことを指します。例えば、採取した水の中に含まれる成分を専用の機械を使い特定することがありますが、その機器の開発から保守まで、環境エンジニアによって行われることになります。
公共団体
公共団体は、街の環境保全や世界遺産の保全、そしてその土地の生物多様性などを守る取り組みを行っています。それだけではなく、公園や道路などの公共施設の設備や衛生管理も、環境エンジニアによって管理されています。
環境エンジニアに必要な資格・スキル
環境エンジニアは、資格よりもスキルや経験が重視される職種です。ただ、実務経験を十分に積んでいる方は、関連資格取得の勉強をすることで、転職市場に出た際に実務経験の裏付けとしてもポジティブに受け取られます。環境エンジニアとしてのキャリアアップをお考えの場合、以下の関連資格の取得がおすすめです。
環境エンジニアに役立つ資格
- 土壌環境監理士:土壌・地下水汚染の調査や対策に関する知識と判断力があることを認定する民間資格の一つです。
- 土壌環境保全士:土壌・地下水環境保全分野で社会に信頼されうる資質を有する人材を教育・認定するための民間資格です。
環境エンジニアとしてのキャリアを築くために必要な知識としては、大きく分けて環境保全技術に関する知識と廃棄物処理やエネルギーに関する知識が挙げられます。環境保全技術に関しては大学の工学部や理工学部で、廃棄物処理やエネルギーの知識に関してはバイオテクノロジー関連の学部で学ぶのも良いでしょうし、大学院で修士号を取得することも、転職の際に大きなプラスとなるでしょう。
その他にも、以下のようなスキルが実際の環境エンジニアの業務で求められます。
- 正確な製図スキル
- 機械の設計・製作スキル
- 機械のメンテナンススキル
- 環境調査スキル
- 機械開発の承認を得るためのプレゼンテーション力
- チームや関連部署と協力して開発を進めるためのコミュニケーション能力
環境エンジニアの将来性と今後の課題
環境エンジニアは公共性が高い仕事であるため、将来的にも仕事がなくなる可能性も低く、景気に影響されることも比較的少ない安定性の高い職種です。近年では脱炭素社会の実現や二酸化炭素の排出量削減に向けて環境エンジニアのニーズは年々高まっているため、将来性も非常に高いと言えます。
高まる環境工学への関心と環境エンジニアの知名度
とは言うものの、日本では環境エンジニアの知名度はまだあまり高くなく、工学における化学、土木、電気、機械の4大分野における課題解決の際の補助的な存在として扱われる場合もあり、これは世界的な動向とも一致しています。GDS Associatesの環境サービス部門責任者であるダン・ウィトリフ氏は、「環境エンジニアが何をしているのか、まだあまり知られていません。現時点では、『環境エンジニア 』と聞くと、環境保護主義のような考え方を持った人の集まりだと臆断してしまう人も多く存在します」と述べます。
2022年から2030年までは特に、環境エンジニアに対する世界的なニーズの高まりと更なる活躍が期待されています。それに伴い、環境エンジニアやその仕事内容が、より多くの人に認知されることが予想されます。また、環境エンジニアの持つ専門性が、気候変動の緩和やカーボンニュートラルの改善に活かされることで、環境エンジニアの知名度向上、そして環境工学という分野そのものへの関心がさらに高まることが期待できます。
ネットゼロ達成に向け、カギとなる環境エンジニア
近年高まるネットゼロへの課題解決においても、環境エンジニアの役割がより重要なものとなっていくでしょう。Amey Consulting社のシニアシビルエンジニアであり、IET/女性工学協会賞の受賞歴を持つエフティキア・クールサリ氏は、「グローバルでのネットゼロ目標の達成には、環境エンジニアを代表とする全てのエンジニアの役割がますます重要になると考えています。」と述べます。
また、Sweco社のサステナブルコミュニケーション代表であるモニカ・ウェランダー氏は、「社会をより持続可能な方向へと導くには、ネットゼロへの移行の複雑さと緊急性を管理するために、専門分野間の『国境を越えた協力』が必要です」と述べます。そして、「異なる知識と経験を持つ専門家が協力し合いテクノロジーとそのイノベーションを活用することで、環境、社会、経済のあらゆる側面から持続可能な環境とコミュニティをデザインし、発展させることができるでしょう」と続け、特にネットゼロの取り組みの一環としては、工学が社会科学など他の専門分野と協力することが不可欠であることを示唆しています。
未経験から環境エンジニアになることは可能?
Computer Futuresの親会社であるSThreeのSTEM分野における若者世代の意識調査の結果によると、回答者の35%が「社会に影響を与えられる」という理由でSTEM分野でのキャリアを選択したと答えています。その中でも、現在進行形で進む環境問題は世界レベルでの更なる取り組みが求められている分野であり、その解決のために働く環境エンジニアとしてのキャリアを築くことは、大きなやりがいへと繋がります。
環境エンジニアは、必要な知識やスキルさえ身に着けていれば、未経験からでも目指すことが可能です。Progressive Recruitmentでは、環境エンジニアだけでなく、再生可能エネルギー領域における案件などのグリーンキャリアに該当する求人を数多く用意しております。当領域での豊富な経験と知識を持ったコンサルタントにぜひご相談ください。以下から無料相談のお申し込みができますので、お気軽にお問い合わせください。