COP26(国連気候変動サミット)とは?決定事項とこれからの課題について徹底解説【ESG】

2021年10月31日から約二週間にわたって英グラスゴーで開かれたCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)から約1か月半。開催期間中は連日電機自動車(EV)に関する宣言や石炭火力廃止をめぐる議論などの放送が相次ぎ、COP史上最も注目を集めたとも言われていますが、このCOP26に関して押さえておくべきポイントや決定事項とはいったい何なのでしょうか?
今回はCOP26の概要と、今回COP26で見えてきたESG関連の今後の課題について解説していきます。また、今後さらに注目が集まり、重要性が高まっていくことが予想されるサステイナブル・ESG領域では、新たな仕事が生まれ人材への需要が高まることが予測されています。記事後半では当領域における採用動向と今後の展望についてもご紹介していますので、ぜひご覧ください。
COPとは?
COP(Conference of the Parties)は「締結国会議」の略で、「気候変動枠組条約」の加盟国が地球温暖化を防ぐための枠組みを議論する国際会議です。新型コロナウイルス感染症の拡大により中止となった2020年を除き1995年からほぼ毎年開かれており、「大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させる」ことを究極の目標に、そのために必要となる国際的な対策についての取り決めを行っています。
COP26の主な成果5つ
1. 石炭火力の段階的な削減
今回COP26において最も注目を集めていた点の一つが「石炭火力発電の段階的廃止」です。当初の議長案では「石炭及び、化石燃料補助金の段階的”廃止”の加速」という文言が盛り込まれていましたが、その後幾度かの修正を経て、最終的なグラスゴー気候同意の採択直前で石炭火力発電の「段階的な”削減”」という表現で合意に至りました。特定の燃料を名指しにして各国の内政に関わることに言及することは非常に異例であったため、パリ協定の目標を達成するためには石炭火力発電の削減が必要不可欠だと、世界的認識を示す出来事となりました。
2. 気温上昇目標が1.5度に強化されたパリ協定
もう一つの大きな成果としては、産業革命前からの気温上昇を1.5度に押さえるという努力を追及すると宣言したことでした。 これはパリ協定で設定された「2030年までに気温上昇を2度に抑制する」という目標を1.5度に抑制することで、事実上強化したことになり、世界の気候変動への危機感の表れとも言えます。
3. 温室効果ガス削減量の国際取引ルールが決定
パリ協定6条では、温室効果ガス削減(クレジット)の国際取引にともなう二重計上防止策、クレジットの算定方法などの市場メカニズムに関するルールが設定されています。ただ、これまでは様々な対立点が発生していたことから、実際にこれらを実施に移すための必要な詳細ルールが決まっていませんでした。今回のCOP26では、これらのルールが整備され、排出削減分を分配する際のダブルカウントが生じないような対策や、CDM(クリーン開発メカニズム)の排出削減分は限定的にしか認めないなどといったルールを整備しました。
日本では独自に二国間クレジット制度(JCM)という制度を取り入れ、途上国の排出削減を支援してきたため、これは非常に重要なテーマでした。今回の6条の整備により、日本は支援してきた途上国で実現した排出削減枠の一部を日本の削減分としてカウントするためへの一歩を踏み出す形となりました。
4. 2030年目標の見直し
前述のように、COP26では2030年までに気温上昇を1.5度に抑制することを目標としましたが、会議内における各国の削減目標を足し合わせた結果、この1.5度という数値は達成が困難であることが判明しました。これを受け、現状の2030年までの1.5度という目標を「野心的な」数値であるとし、2022年末までに再度目標を提出することを各国に要請しました。
現状、1.5度を達成するためには各国の目標数値は不十分であり、再提出された数値を達成するための拘束力もあるわけではないものの、2025年に予定されている次の目標提出時期を待たずに2022年末までの再提出を決定したことは評価できるでしょう。
5. 年間1000億ドルの途上国支援を確実に実行
気温上昇抑制の目標の達成のため、途上国もより一層二酸化炭素排出量を減らすための対策を施していかなければなりません。このために途上国は先進国からの十分な支援が必要となり、今回のCOP26では「途上国に対し、年間1000億ドルを支援する」という目標が設定されました。2009年にはコペンハーゲンで開かれたCOP15で「2020年までに、年間1000憶ドルを途上国に支援する」という目標が設定されましたが、結局未完成に終わったことが議題として取り上げられ、先進国は2025年に向けてこの目標達成のためのさらなる努力を続けることが決定しました。また、2025年以降の更なる資金目標に関する議論も始めることとなり、異常気象等への対応策のための資金も2025年までに2019年比で倍増を目指すこととなりました。
2022年以降の課題とは?【COP26・ESG】
2030年までの10年間は地球温暖化や気候変動対策の正念場といわれており、今回のCOP26は開催前から非常に大きな注目を集めていました。今回、会議内で気温上昇を1.5度以内に抑えるという目標を世界全体で確認できた点において、今後社会システム変革を含めた大胆な対応を取り入れていくためのスタート地点にようやく立つことができたと言えます。
今後はこの目標を達成するための動きをどれほど加速化できるかが焦点となります。特に国単位における排出削減目標の提示がひと段落した今、民間企業や自治体の役割がより重視されます。COP26においても「有志連合」という手段が新たに取り入れられましが、これに賛同する主要企業や国が声明を出すことで、他の企業や自治体に自らの行動を考え直させるきっかけとなることが期待されます。2030年までの目標達成、そして何より将来世代のために各民間企業や自治体が具体的な政策の方向性を示し、自主的に取り組みを宣伝していくことが求められています。
二つの課題「適応」「生物多様性」
国際NGO「WWFジャパン」の気候エネルギー・海洋⽔産室⻑の⼭岸尚之氏は、COP26で決定した地球温暖化や気候変動対策における目標を達成するための課題として「適応」と「生物多様性」を挙げています。
適応
「適応」とは具体的に、途上国に対する気候変動への適応を指します。具体的には、気候変動が既に出ている地域の被害や、将来起こることが予測される被害の防止策のための資金集めが含まれます。前回合意した年間1000億ドルの途上国への支援金の目標が達成されなかったことを受け、今回のCOP26で発展途上国は遺憾の意を示しました。次のCOP27の開催予定地は、既に気候変動の影響を受けているアフリカ大陸でもあり、これまでに以上に「適応策」と「損害と被害」(実際に被害が出てしまった場合の対応)に焦点が当たることが予測されます。このことからも、2025年以降の新たな資金目標の議論が求められています。
生物多様性
様々な生物が絶滅の危機に瀕し、現在注目が集まりつつある生物多様性ですが、種の個体数群をもとに世界自然保護基金(WWF)が算出した「生きている地球指数」のデータによると、1970年代以降生物多様性は減少傾向をたどっています。一方、グローバルリスク評価では生物多様性が急上昇しており、企業活動が生物多様性全体に与える影響へも注目が集まっています。これらの影響をグローバルな枠組みで把握していくことが求められると山崎氏は述べています。
また、最近ではビッグデータを活用した「生物多様性地図化プロジェクト」などの、生物多様性の現状を可視化することで個人や企業へSDGsへの取り組みを促す動きも見られており、今後このような活動が拡大することが期待されています。
ESGやサステイナブル領域に関連する仕事の求人はどう変化する?
COP26の開催を期に、温室効果ガス削減や気候変動への対策などの大きな潮流が生まれつつあり、個人レベルや企業レベルでのより一層の取り組みが求められていくことは間違いありません。現在人材が足りていない状況ともいえるサステイナブルやESGに貢献できる仕事の求人数も、今後さらに増加することが見込まれます。例えば、環境問題に対応す技術開発や商品開発は、地球規模で活用が広がることが考えられ、国内でも省エネルギー技術や再生可能エネルギー分野における採用がより活発化しています。
以下の記事では、サステイナブルやESGに貢献できるグリーン・キャリアおよびグリーン・ジョブの代表例や、未経験からでもグリーン・キャリアを築くための方法についてご紹介しています。

地球に優しい働き方『グリーン・キャリア』とは?
記事を読むまた、再生可能エネルギーに携わる企業の種類についてはこちらの記事で詳しくご紹介しておりますので、ぜひご覧ください。
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