製造業の人手不足と今後の課題とは?

「ものづくり」とも呼ばれる製造業において、人手不足が深刻化しています。2017年12月に経済産業省が行った調査によると、人手不足は94%以上の大企業・中小企業において顕在化しています。このうち32%の企業が「ビジネスにも影響が出ている」と回答しており、このような回答をした企業の業種は、上位から輸送用機械、鉄鋼業、非鉄金属、金属製品となりました。特に人材確保に課題がある人材として「技能人材」が特出しており、中小企業ほど確保に苦労していることが明らかとなりました。
今回は製造業の人手不足の原因やその対策と今後の課題について解説していきます。
製造業における人材不足の原因
日本の製造業が人手不足に陥っている理由には、労働人口の減少はもちろんのこと、以下で解説するような負のイメージを持たれやすい業界特有の側面が挙げられます。また、人材の流動化によって従来の「見て覚える」方法では技術の継承が難しく、人材が育っていないことも人手不足の要因となっています。
製造業に対する負のイメージ(3K)
製造業に対する「きつい」「汚い」「危険」というような、いわゆる「3K」のイメージは未だに拭い切れていません。こういった理由で、他の業種へ人材が流れていることや、デジタルネイティブと呼ばれる若者の確保が進まない点も、業界での人材不足の原因の一つです。
世代交代の失敗・後継者不足
日本の伝統的な技術継承方法として、OJTと呼ばれるものがあります。これは(On-the-Job Training)とも呼ばれており、「言って聞かせる」「やって見せる」「やらせてみる」という考えに基づいた実務を交えた職業研修法です。しかし、このOJTに基づいた研修方法では、実際の調達や開発、設計などの部署に移るためには約10年の実務経験が必須とされており、この過程で多くの人材がより条件の良い企業へと流れてしまうといった課題が浮き彫りとなっています。
また、他業界と同様に製造業においても世代交代の時期にあり、大量退職と人材育成の遅れは業界における人手不足を深刻化する原因となっています。「2020年版ものづくり白書」によると、製造業に携わる企業が直面している経営課題に関する問いに対し、大企業・中小企業ともに約42%が「人手不足」と回答していますが、これに加え大企業の17.1%、中小企業の22.7%が「後継者不足」を経営課題として挙げています。経済産業省による調査でも、2025年までの4年間で経営者の引退平均年齢が超える企業のうち、約半数は後継者が未定だと回答しています。これは経営層だけでなく技能人材にも当てはまり、新たな人材確保のために技能を担う新たな若手の人材確保が必須と言えます。
製造業の人手不足を解消する方法・今後の課題
深刻な人手不足が課題となっている製造業ですが、中には人手不足解消に乗り出し、実際に成果をあげる企業もあります。以下では、製造業の人手不足を解消する方法と、具体的な対策内容の例をご紹介します。
現在働いている人材の離職を防ぐ
社員の離職率を低下させるとともに社員を定着させ、採用を増やすためには、労働条件と職場環境の改善が重要です。
労働条件の見直し
労働条件に関しては、賃金の改善や福利厚生の見直しなどが挙げられます。
その他の例としては、
- 資格取得支援制度
- 英語学習補助制度
- 家賃補助制度
- ペット同伴制度
- ペット慶弔金
- フレキシブルキャリア休職制度
- 無料軽食サービス制度
- 年間MVP制度
などが含まれ、ユニークな制度を取り入れている企業も多くあります。労働条件の見直しは人材を確保するためには必須と言え、近年は中小企業を中心にこれらの改善により採用を成功させているケースも多々見られます。
職場環境の見直し
労働条件の見直しに加え、社員が安心して健全に働くことの出来る環境を整備することも離職率の低下や人材確保のために大切です。
職場環境について具体的には、
- 新型コロナウイルス感染症などの感染対策がしっかりとされているか
- リモートワークが可能な環境や業務があるか
- キャリアアップが可能な教育研修があるか
- 顧客や社員の情報管理・セキュリティ管理がされているか
- 違法な長時間労働を社員に課していないか
などが挙げられます。社員が安心して健全に働くことができる環境を整備し、離職率低下や採用での人材確保を目指しましょう。
女性・障がい者・シニアを積極的に採用する
生産年齢人口は15歳から64歳までで、特に今までは男性を中心とした採用や人材活用が盛んに行われてきました。製造業の人手不足を解消するためには、女性や障がい者、シニアを積極的に採用することも大切です。女性の社会や知識や経験の豊富なシニア層の積極採用により企業文化に多様性が生まれ、事業課題の解決などのメリットに繋がることも考えられます。
業務内容によっては人材が健常者である必要はありません。障がい者といっても様々な分野で優秀な方は多く、専門的なスキルを持っている方など自社が求めている人材を採用することができる可能性も十分にあります。
また、企業側としても、女性・障がい者・シニアの積極採用により社会貢献に繋がるとともに、企業のPRやブランディング向上という面においても大きなメリットを生むことができます。
外国人を積極的に採用する
経済産業省は「新たな外国人材の受入れについて」というガイドラインを公開しており、外国人を雇用している事業所の数も年々増加しています。現在は新型コロナウイルス感染症の影響により日本への出入りは激減している状態ではありますが、日本の在留外国人は年々増加傾向にあります。国際連合の推計によると、世界人口に関しても今後30年で20億人の増加が見込まれており、多くの外国人労働者が日本に滞在することも予想されています。
Progressive Recruitmentは外国人の採用サポートを強みとしているだけでなく、グローバルなネットワークを持っておりますので日本国外での採用ニーズにもご対応が可能です。採用をお考えの地域が日本オフィスのカバー領域ではない場合は、最も適切なProgressive Recruitmentの海外オフィスにコンサルタントをご紹介いたします。ご興味がございましたら、こちらよりお気軽にお問い合わせくださいませ。
AIやICTを積極的に活用する
AI(人工知能)やICT(情報通信技術)を活用することで、生産性向上や業務効率化が見込まれるだけでなく、従業員の育成コストを抑え、業務の属人化を解消することができます。例えば、ライン作業に産業用ロボットを導入することや、技能やノウハウのデータベース化・マニュアル化、事務作業をAIやICTに強みを持つ企業にアウトソーシングすることなどが挙げられます。
AI・ICTの活用にあたっては、AI分野や産業機械に関する専門的知識を持つ人材の育成・獲得も必要となってきます。設備や機器の導入費用も高額になるケースが多いため、予算とのバランスを考慮したうえで検討してみましょう。
人材育成への投資
人手不足を補うために社員一人当たりの生産性を上げることも対策の一つです。このためには、社員のスキルを向上させるための教育投資が必須であり、具体的には、前述の最新テクノロジーを活用する場合におけるトレーニングの徹底などが、一例として挙げられます。一見遠回りのようにも感じられますが、中長期的に見た場合、圧倒的な生産性を生み出す可能性もあります。
メディアへの露出でイメージアップを図る
前述したように、製造業の3K(きつい・汚い・危険)といったネガティブなイメージは、業界における人手不足の大きな原因とも言えます。各種メディアへの露出を図ることで、これらのマイナスイメージを払拭し、自社の魅力を効果的にアピールすることができます。メディアの主な活用例として、以下のようなものが挙げられます。
- オウンドメディアを立ち上げる
- CM・Web広告を出稿する
- SNSで積極的に情報発信を行う
- Webメディアに取材してもらう
ただ、メディアへの露出はあくまでもイメージアップ戦略であり、長期的な視野で効果を出したい場合に適した方法と言えます。より直接的な人材確保を目指している場合は、より短期的に成果の出る手法を優先することが適切かもしれません。
外部委託によるアウトソーシング活用
事業の性質上、企業によっては業務量が極端に変動する繁忙期や閑散期に対応するために人材の確保をする必要があるため、頭を悩ませている方も多くいることでしょう。採用をしても退職していまい、採用や教育コストばかりがかさみ、思うように業務遂行ができないといった課題を持つ企業も少なくありません。そのような場合、ある特定の業務において社外に処理できるチームを設置することで人手不足の課題に柔軟に対応できる可能性があります。アウトソーシングに適切な業務としては、遠隔でも可能な事務作業や見込み客の開拓といった、技能とは違った分野が挙げられます。技能以外の部分を外注し、企業は技術に人材を集中させることが可能となります。
人材紹介会社を利用する
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