2021年における太陽光発電市場のトレンド ― 今後の動向と今注目の分野・企業とは?

2020年以降、コロナ渦により世界経済は減速しましたが、電力業界や自動車業界などにおける脱炭素の動きや、それに伴う再生可能エネルギーへの投資は加速しています。IEA(International Renewable Energy Agency)による調査では、2020年における自然エネルギー電源の投資額が前年よりも7%増加したことが発表されています。太陽光に焦点を当てると、中国とアメリカの存在感が大きく、中国は2020年末までに254百万kWが導入されています。日本においては、国内で販売されている太陽電池モジュールの平均販売価格は減少傾向にあるものの、この二か国に続き世界第3位として同年67百万kWが導入されており、市場は安定しています。
今回は2021年における太陽光発電業界のトレンドと展望、そして太陽光業界の大まかな構造や関連する企業について解説していきます。
太陽光発電市場のトレンドと展望
2020年にリリースされた「Market Research Report」によると、世界の太陽エネルギー市場は、2019年以降2026年にかけて年平均20.5%のペースでで成長し、2026年には2,233億ドルに達すると予測されています。環境汚染の増加や、太陽電池パネル設置に対する政府のインセンティブ・税還付の提供を原動力として、太陽エネルギー市場が成長することが見込まれています。東京都では、新築住宅への太陽光発電の設置義務化も検討され始めました。
また、太陽エネルギーシステムに関連したウォーターフットプリント(生産の際に必要となる水の量)の減少が、発電分野での需要を促進しています。近年は、個人と企業の双方において屋上へ太陽電池を設置したいというケースが増えています。さらに、パラボリックトラフ(放物面鏡を使用した発電システム)やソーラーパワータワーの発電需要が、集光型太陽光発電システム(CPV)の需要を後押しすることが期待されています。この集光型太陽光発電システムとは、太陽を追尾しながらレンズで集光するシステムで、薄型・軽量かつ安定した次世代の太陽光発電装置として高温・高日射地域において近年導入が増えています。
太陽光発電を利用した配電システムの発展に伴い、メーカー間の競争は激化しています。また、欧州やアジア太平洋地域では、市場が需要指向であるため、太陽電池モジュールの価格が大きく異なっています。さらには、モジュールメーカーの収益性の低下や市場の買収ストレスなどにより、太陽電池パネルの価格の低下も見られています。太陽電池モジュールの主な原材料である銀の価格が変動しているため、太陽電池パネルの設置需要が高まり、太陽エネルギー市場の成長も後押ししています。
太陽光蓄電システム分野の開発
太陽光発電システムが既存の従来型電源に取って代わるためには、太陽光発電貯蔵システムの開発が不可欠です。太陽光発電システムの設置需要の増加に伴い、蓄電システムの導入も増加することが予想されており、これが太陽エネルギー貯蔵用のリチウムイオン電池の需要を高め、太陽エネルギー市場の成長を促進します。
費用対効果の高い太陽電池への需要拡大
太陽電池は高価で特殊用途でしか使えないという常識を覆した「アモルファスシリコンセル太陽電池(非晶質シリコンを使い製造された太陽電池で、従来の電池と比べ機械強度・耐摩耗性・電気特性が高いといった特徴があります)」は、現在ソーラーパネルへの設置や利用が増加しているため、今後も大きな成長が見込まれています。また、費用対効果の高いソーラーパネルの増加により、2028年までにCIGS(Copper Indium Gallium Selenide。太陽電池によく利用される素材の一つ)の需要が増加することも予想されています。さらに、太陽電池モジュールの低コスト製造と効率の向上により、太陽エネルギー産業におけるテルル化カドミウム(太陽電池の材料として用いられる無機化合物)の需要が増加することも期待されます。
太陽光発電業界の構造
太陽光発電に関連した企業への就職・転職にご興味がある方も多いかと思います。以下、太陽光発電業界をさらに細かく分類し、関連した企業についてご紹介します。
電力会社(東京電力など)
大手電力会社と新電力などの電力会社が含まれます。
パネル業界(三菱電機株式会社、NDS株式会社、東芝プラントシステム株式会社など)
京セラなどの大手電機メーカーのことを思い浮かべる方も多いかもしれませんが、実際に世界で活躍するパネル業界の主要プレイヤーは中国を中心とした海外勢がほとんどです。国内勢は世界レベルで見るとまだまだと言えますが、一方、住宅の屋根に設置するタイプでは消費者から国内産が選ばれる傾向にあるなど、現状限られた分野において国内勢がリードしています。
パワコン業界(オムロン株式会社、パナソニック、TMEICなど)
パワコンは一定程度で交換するものとされているため、比較的国内のメーカーが選ばれています。その一方で、アメリカなどにおいては中国HUAWAI社製品など、コストと機能のバランスが良い製品が選ばれる傾向にあります。
架台業界(Huge Energy Technology Co., Ltd、株式会社ハイパーエナジーなど)
現状はコスト上の優位性から、中国メーカーが市場を独占しています。国内では、JIS規格の改定、そして地上設置型太陽光発電システムの設計ガイドライン及び構造設計例についてなどのガイドラインも整備されてきています。
商社業界(富士電機株式会社、住友電気工業株式会社など)
再生可能エネルギーに強い商社は、振興系の企業から大手商社まで、部材の取引以外にも幅広く取引を行っています。
O &M業界(アドラーソーラーワークス株式会社、エクソルなど)
オペレーティング&メンテナンスと呼ばれる分野です。近年、大型の太陽光発電を中心に、メンテナンスを専門に請け負う業者が成長を続けています。
メガクラス以上の大型案件を手掛ける、大手ゼネコンを指します。一般に日本では数千億から数兆円の売り上げを持つ建設会社をゼネコンと呼ぶことが多く、鹿島建設や清水建設など大手5社からなる「スーパーゼネコン」を筆頭に、前田建設工業や西松建設などの「準大手ゼネコン」、東洋建設や飛島建設といった「中堅ゼネコン」などに分類されます。
独立系の会社だけでなく、近年はなどの再生可能エネルギー有名銘柄や、再生可能エネルギーを請け負う専門のREIT(リート。不動産投資信託)が上場しています。これらの企業は情報が開示されるため、気になる方はそれぞれの企業がどのような動きをみせているのか、詳細に読み取ることが出来ます。
低圧全国型企業(株式会社エコスタイルなど)
低圧系の発電所を中心に、全国で幅広く低圧案件を手掛けている業者のことを指します。
地域密着型企業(株式会社イスズ、千葉エコ・エネルギー株式会社など)
地元を中心に電気工事を手掛けている工事会社のことを指します。
監視システム関連企業(千葉エコ・エネルギー株式会社など)
発電量を計測する監視システム、高圧、低圧用など様々な種類のシステムを取り扱う企業です。大手企業からベンチャー企業まで、様々なタイプの遠隔監視システムが取り扱われていますが、近年では、各社異なるタイプの情報を集約する「電力のインターネット化」「ブロックチェーン化」を見据えたサービスも登場しています。
日中太陽光発電で発電した電気を蓄電システムに貯め、夜間等に利用するというシステムを取り扱う企業です。特に自動車メーカーに電池を供給するメーカーが業界の主要なプレイヤーで、各社様々なタイプの製品を販売しています。アメリカでは の住宅用蓄電の設置も開始されており、今後更なる成長と価格競争が予想される市場です。
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