再生可能エネルギーの種類、日本の現状と課題

地球温暖化対策の大きな柱の一つである再生可能エネルギー。社会としてもSGDs (Sustainable Development Goals: 持続可能な開発目標)への意識が高まっていることに加え、石炭や石油、天然ガスなどの資源に乏しく、東日本大震災以降原子力発電への懸念が高まっている日本においては、再生可能エネルギーはまさに国内で電力源を確保することができる数少ない手段の一つです。
この記事では、再生可能エネルギーとは?という基本的な部分をまずご紹介し、再生可能エネルギーの種類や各手段のメリットとデメリット、発電の割合や日本における現状と今後の見通しについて解説します。
再生可能エネルギーとは?
再生可能エネルギー(Renewable Energy)とは、石炭や石油などの供給に限りのある化石燃料を用いずに、太陽光や風力など自然界に常に存在する力を利用して生まれるエネルギーを意味します。エネルギー源が枯渇しないため半永久的に利用可能なことに加え、CO2を排出しないため地球温暖化対策の向けた大きな取り組みの一つとなっています。
再生可能エネルギーの種類と日本の現状
再生可能エネルギーには大きく分けて以下の種類があります。
• 風力
• 太陽光
• 水力
• バイオマス
• 地熱
以下では、各発電方法のメリットやデメリットに加え、日本における現状と課題について解説します。
太陽光発電とは?
太陽光のエネルギーを太陽電池で直接電池に変える太陽光発電。メリットとしては、太陽電池の寿命が他の発電システムに比べて長いことや、一度導入してしまえばメンテナンスの手間がかからないこと、また設置場所を選ばないため個人での導入も容易である点などが挙げられます。災害の多い日本では、非常用電源としての利用もされています。デメリットには、天候に左右されることや夜間は発電ができないこと、また電気エネルギーへの変換効率が悪いことなどがありますが、技術革新によって変換効率は以前よりも高い水準となっており、今後さらなる伸びしろが期待できます。
日本の現状と課題
日本は太陽光発電発電導入量において世界をリードしており、2019年の時点で中国とアメリカについて世界3位の累積導入量を誇ります。2020年上半期では、日本の発電量に対する再生可能エネルギーの割合は23.1%と推計されており、太陽光発電はそのうちの9%を占めます。
日本において太陽光発電の導入が広まった背景には、2012年に固定価格買取制度(FIT)が始まったことが挙げられます。固定価格買取制度とは、再生可能エネルギーで発電した電力を、電力会社が一定の価格で、一定の期間買い取ることを国が保証する制度です。
課題の一つとしては導入コストがあります。自然エネルギー財団のレポートによると2018年には1kWあたり20万円を超える設備が多かったものの、2021年には約15万円まで下がっています。今後さらなる導入を進めるためには、技術開発によるコスト削減が大きなカギとなるでしょう。
風力発電とは?
風力発電も世界的に導入と普及が進んでいる発電方法です。特にヨーロッパでは政府が積極的に風力発電による発電量の増加を目指していることもあり、2027年にはkWhで比較した場合に最大の電力源になるとも言われています。
風力発電のメリットとしては電気への変換効率が良いことや、昼夜問わず稼働可能なことが挙げられます。一方でデメリットとしては風の強さにより出力が左右されることが挙げられます。
従来は陸上にタービンを設置する風力発電(オンショア)が主流でしたが、ここ5年ほどで海洋上で発電を行う洋上風力発電(オフショア)が増えています。洋上では陸上よりも風の状態が良く、高い効率での発電を見込めることに加え、タービンを船舶で輸送するため、陸上輸送に比べて制約が少ないことが利点として挙げられます。
日本の現状と課題
日本でも風力発電の導入量は増えており、2010年に233万kWだった累積導入量は2019年には392万kWまで増えており、日本政府は、2030年までに、総発電電力量に対して風力が占める割合を1.7%まで増やすことを目標としています。
一方で、特に今後主流となっていくであろう洋上発電において、ヨーロッパ諸国に比べて大きく後れを取っていることも事実です。この背景には主に以下のような課題がありました。
• 遠浅の地形が多く風車を設置しやすいヨーロッパに比べて、日本は急に深くなるような海底が多く、設置が難しい地域が多い
• 地震や津波などの自然災害が多いため、リスクの検証に時間がかかる。
• 海域の使用に関する統一的なルールが制定されていない
• 海運業や漁業など、すでに特定の海域を日常的に利用している人々がいるが、それらを把握する仕組みがない
これらによって、施設管理や稼働の長期的な見通しが立てづらく、企業が参入する際のハードルが極めて高い状態にありました。しかし、2019年には再エネ海域利用法が制定され、法整備も徐々に進んでいます。同年に一定の準備段階に進んでいる海域として定められた11区域の中で、有望な4区については入札プロセスが進んでおり、そのうちの1つである秋田県能代沖においては2021年2月に工事が着工しました。このプロジェクトは丸紅株式会社が筆頭株主である秋田洋上風力発電株式会社(AOW)によって進められており、2022年末までの商業運転開始を目指しています。
水力発電とは?
水力発電は高いところから低いところに水を流す時のエネルギー(位置エネルギー)を利用して水車を回して発電を行う方法です。メリットには安定して長期間の運転が可能なことや、風力発電と同じくタービンを用いての発電となるためエネルギー変換効率が高いことが挙げられます。一方でデメリットとしては、新たな発電所を建設するとなると事前の調査や土地の利害関係者との調整に時間やコストがかかることがあります。
水力発電の方法には流れる河川をそのまま利用する方法や、ダムに水を貯めて流す方法などがあります。後者では雨や水流が少ない時期や電力の需要の多い時間帯に発電を行うなど調整できるというメリットがあります。
日本の現状と課題
水資源に恵まれ起伏の多い日本では、水力発電は昔から盛んに行われてきました。日本全国では2000か所以上の水力発電所があり、日本の発電量に対する再生可能エネルギーの割合23.1%のうち水力発電は10.3%と最大の比率を占めています。以前は上述の貯水式(ダム)の発電所が一般的でしたが、近年は河川の流れの他にも農業用水や上下水道を利用した中小水力発電の建設が多く見られます。
課題としては新規開発にかかるコストが挙げられます。現在開発済みの2000か所の水力発電拠点と比べて、未開発の拠点が2700以上と数としてははるかに上回っており、開発のポテンシャルを秘めていますが、これらの土地は山奥などアクセスが容易でない土地が多いためです。
バイオマス発電とは?
動植物などを由来とする生物資源(バイオマス)を燃やしたりガス化したりすることで電力を生み出す発電方法です。メリットとしては農業や畜産の過程で出た廃棄物や食品廃棄物などを再利用することですでにある資源を有効活用してゴミを減らすことができる点や天候に左右されずに発電が可能な点、デメリットとしては資源が小さな規模で点在しているため、管理や収集が大変という点が挙げられます。
日本の現状と課題
バイオマスは他の再生可能エネルギーと比べても発電電力の割合はまだ決して高くはありません。日本では2021年時点で2.5%となっており、世界の他の国でも同様の水準を保っています。日本国内のバイオマス発電では、主に木質ペレットと呼ばれる木くずなどを集めたものや、パームヤシの殻(輸入が主)が用いられていますが、林業の従事者が高齢化していることや日本の急な勾配の多い地形で伐採が難しいことから、原料となる木質ペレットの調達が困難となっており、政府の固定価格買取制度(FIT)に認定されている案件のうち、実際には2割しか稼働していないとも言われており、原料の確保も大きな課題となっています。
地熱発電とは?
地下に蓄えられた地熱を蒸気や熱水として取り出し、タービンを回すことで発電する方法です。大規模な発電が可能であり、季節や昼夜を問わず安定した出力ができるなどのメリットがある一方で、調査や開発まであわせると10年近くという長い時間がかかったり、すでに該当地域が温泉や国立公園として利用されている場合が多く利害関係の調整が困難だったりといったデメリットが挙げられます。
日本の現状と課題
火山帯国であり、地熱の資源量としては世界3位と言われる日本。しかしまだまだ導入や普及が進んでいないのが現状です。課題はデメリットとして上述した2つの要因が中心となっています。すなわち、一つ目の課題は地熱資源に恵まれた場所の大半が国立公園に指定された地域や温泉街として知られている地域であるため、地熱発電所の建設が難しく、大規模な地熱資源の開発ができていないためです。二つ目には、研究や調査に時間がかかることが挙げられます。事実、現在開発が完了しているもしくは進んでいる地域の大半が、これまでにすでに調査が完了していた場所であり、今後ポテンシャルのある地域を見つけるためには新たな調査が必要となります。加えて、地下リスクと呼ばれる問題、すなわち空中センサーなどを用いて目星を付けることは可能であるものの、実際の資源量や状態はいざ地価を掘ってみないとわからないことが多いのも、迅速な普及の前に立ちはだかる壁となっています。
再生可能エネルギーの今後
日本政府は2030年までに総発電量の22~24%を再生可能エネルギーで賄う目標を立てており、2020年時点で23.1%と目標に対して順調な普及の拡大を見せています。また上述のように再生可能エネルギーは調査や開発、設備の維持にコストや時間がかかることが多いため、利益を追求することが難しいこともあり、政府の積極的な助成や補助にくわえてリスク削減のための法整備も鍵となってくるでしょう。
また、再生可能エネルギーには分類されないものの、CO2を排出しないという点で水素を燃料とした火力発電も注目を集めています。こちらも燃料となる水素の高コストなどの課題があり、実際に電源として利用可能となるまでにはまだ時間がかかることが想定されますが、脱炭素(カーボンニュートラル)社会を推進していくうえで重要な役割を担っていくと考えられます。
再生可能エネルギー産業全体としては、発電所の開発などは大きな基盤のある企業や政府および自治体との共同プロジェクトが今後も主流である一方、例えばソーラーパネルや風車のタービンの部品など、発電効率を上げるための技術革新は民間企業主導で進んでおり、従来のインフラ事業から新事業として展開する企業や、海外から日本に進出を目指す企業など、市場規模としては今後益々拡大していくことが予測されます。それに伴い、事業立ち上げのフェーズでの採用活動が積極化していくことが考えられます。
欧米諸国ではグリーンキャリア (Green Career: CO2削減や環境保全に貢献する業界や業種での仕事)や グリーンスキル (Green Skill: CO2削減や環境保全に貢献する仕事で活かすことのできるスキル) への注目も高まっており、再生可能エネルギー関連の仕事は未来志向が強く、今後成長が期待できるキャリアの選択肢でもあります。
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